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宗流がお届けする小さな豆知識。
by sou-ryu_mame

原点回帰(?) 絹について10(終)


こんばんは。
本日の京都は朝から一日雨模様でした。
でも、今日の雨は暖かな雨です。
心なしか、街の木々も雨に濡れるのを楽しんでいるよう。
あ~、このまま春になったらいいのに…と、
甘い事を考える宗流です。


さて、本日は「絹について」のお話も、記念すべき(?)
第10回目となりました。
そして本日は「絹について」最終回です!
それでは、本日もまいりましょう。


糸の準備・図案・綜絖・紋紙と進み、機にかけられた糸は
ようやく織りにかけられます。
あとは職人さん・織機がひたすら織りに専念され、生地が織りあげられます。
今日は最後という事で、「機」についてのお話です。

帯で知られる京都の西陣では、現在量産を可能にするため
「ジャカード機」という機が使われています。
これは前回お話しました「紋紙」を使った織機で、
経糸の上げ下げを紋紙で制御しています。
では、それ以前はどうだったのかといいますと、
平安時代から明治当初までは「空引機」と呼ばれる機を使っていました。
これは、現在のジャカード機のように一人で織るものではなく
二人がかりで織る織機でした。

どのようにして二人の人間が必要かといいますと
一人はよく昔話で見るように機の前で織り手として座ります。
そしてもう一人は織機の上に作られた二階建の床のような部分に
腰を掛け、その場で経糸に通した綜絖を、手で引き上げるのです。
紋紙の役割を、まさに人間の手で行うという訳なのです。
これには下の織り手の人間と息があわなければ、
縦糸を引き上げるタイミングがとれません。
そこで、上下に座るコンビで歌を歌い、それに合わせて織り進めたそうです。
また、こうした空引き機のような機の種類を、「高機」といいます。


それに対して明治になってヨーロッパから導入された機を
「ジャカード機」といいます。
これは1800年代、フランス人ジョセフ・マリー・ジャカード
という人が発明したといわれる織機で、現在の機のように
穴のあいた紋紙を使用するものでした。
当時は人の手で機を織っていましたが、後に現在のような力織機となり
生産性が飛躍的に伸びたということです。
また、この機は「ジャカード」「ジャガード」「ジャカール」などとも呼ばれますが
同じものを指しています。


現在大量に生産される生地のほとんどは力織機によるものですが、
それ以外にも、麻で織られる小千谷縮には「居坐機(いざりばた)」
西陣で織られる帯によく使われる綴れ織には「綴れ機」
沖縄の伝統的な絣織物の琉球絣には「高機」
高級品の代名詞とも言われる結城紬などは「地機」で織られるなど
まだ人の手によって織り上げられるものも多くあります。
また、こうした手織りのものは力織機によるものに比べ
大変高価なものとして流通します。これは時間がかかる事もありますが
やはり機械には出せない味わいをもつ生地が織り上がるからなのです。


そして最後に、
様々な工程を経て織り上がった生地は、以前お話しました「精錬」という
作業を終え、水洗いされて絞られたものを既定の生地幅に伸ばす「幅だし」
そして最終工程の検品を終えてようやく製品となるのです。


多くの人々の手、そして仕事に対しての自負心やプライド
そうしたものが結晶して、一つの反物は出来上がります。
もしどこかで着物の反物を見かけられましたら、
その一反分の重さより遥かに重い職人たちの「きもち」を
感じて頂けましたら、和装関係者の一人として嬉しく思います。


宗流


和装小物 宗流
http://www.sou-ryu.jp
by sou-ryu_mame | 2009-03-06 18:12 | 絹について

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