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宗流がお届けする小さな豆知識。
by sou-ryu_mame

時を超え 正倉院文様その1


こんにちは。
週末の一日、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
私は残念ながらのお仕事ですが、本日の京都はすっきりとした
快晴の秋のお出かけ日和でした。
そろそろ紅葉狩りにもいい季節です、明日辺りは京都も観光の方が
多いのかもしれません♪



さて。
久々の「宗流まめ知識」。
先日、宗流は奈良県の奈良国立博物館に「第61回正倉院展」
を観に行ってきました。
毎回たくさんの方が来場される正倉院展ですが、今回は過去最高の
29万人以上の来場者があったとか。
遥かな歴史に思いを寄せられる方ってホントに多いものなんですね…
そしてただ今宗流も、たまたま正倉院ネタのお仕事をしています^^;
と、いうわけで…本日はこれまた久しぶりに文様についてのお話、
「正倉院文様」についてです。


まずは。
正倉院文様という文様は、縞や格子などの文様とは違い、
何か特定のデザインを指しての文様ではありません。
言ってみれば「有職文様」などのジャンル的分類と言えばいいでしょうか。
どちらも特徴的な文様は多数あるものの、特定の柄一つを
指すわけではありません。

この正倉院文様は、聖武天皇が逝去された際、光明皇后がその冥福を祈り
奈良の東大寺正倉院宝庫に献納された工芸品や美術品・染織品などに
見られる柄を総称しています。
また中でも染織品は「正倉院裂」と呼ばれ、日本最古の染織文様と言われており、
あまたある宝物の中には十数万点もの正倉院裂が有されているそうです。


宝物の数々は、遠く西アジアや中国大陸などの各国から
シルクロードを経て、その終着点として遥か遠くの日本にもたらされました。
元来そうした舶来の柄だからなのでしょう、
正倉院文様は、今でこそ日本の「きもの」の文様の一つとして
しっかりと根付いていますが、どこか異国的な情緒が感じられます。

また今日所蔵されているこれらの宝物は、もともと一般の庶民が
生活の中で使っていた日用品ではありませんでした。
身分のある貴族や位の高い人々のため、名工と呼ばれる人たちが
拵えたものであるため、それに見合った豪華なデザインではありますが
その中にも気品のようなものが存在します。

どの文様もそうなのですが、特徴となるかたちをデフォルメして
一つの図が出来上がる中でも、この正倉院文様は特にその
文様の華麗さや構図の緻密さは素晴らしく、大変凝ったものです。
きっと、現在こうしたものを何の草案もなしに作り上げろと言われたら
大変難しいだろうという気がします。
いまもなお多くの人々の目を奪う宝物の数々は、その高価さだけでは
なく、こうしたデザイン的な素地も高いウエイトを占めている、
それは過言ではないのでしょうか。


また文様の図案のお話としては、空想上の生き物である
鳳凰・龍・麒麟などが多く描かれています。
その他にも植物文様としては唐草や葡萄の実在の植物に加え、
宝草華と呼ばれる仮想の植物文様などもあり、
もちろん実際に日本に存在したものもありますが、
日本固有のものではなく、諸外国からのものも多く含まれます。
そうした国際色豊かな点も大きな特徴の一つです。

そして、その文様の数々にはデザイン的要素のみを
見い出していたわけではありません。
それらの文様の背景には、ちゃんとした謂れや人々の願いが込められていました。
例えばその一つとして、多用されている「葡萄唐草」などは
古代パルミットより生まれたもので、豊かな実りと
生命力の繁栄を象徴しています。
ただの視覚的要素として生まれた文様としてだけなく、
こうした意味合いを持たせることで、文様はただの「絵柄」から
文様としての役割と使命を果たすよう、生まれるのかもしれませんね。


この正倉院文様が生まれたのは今から1300年以上昔の話です。
にも関わらず、多少の劣化は認められるものの、今なお姿形だけでなく
私達はそこに残された色柄や時間の経過をも見る事ができるのです。
私は、それをとても不思議な事に感じます。
言語を発し、ものを作り出す人間には限られた命しか持つ事はできません。
ですが、私達人間が作り出したものは、人の寿命を遥かに凌駕し
幾世代先の人々にもその息吹を伝える事ができるのです。

物言わぬ「もの」が伝える当時の人々の息吹…
正倉院文様には、そうした時代の片鱗が組み込まれている。
私はそんな風に感じます。
だからこそ長い歴史の中、守り継がれてきたのかもしれません。



※次回「その2」では、正倉院文様の例をいくつかあげていきたいと思います♪



宗流


和装小物 宗流
http://www.sou-ryu.jp
by sou-ryu_mame | 2009-11-14 17:58 | 文様について

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