2010 正倉院展 その3
こんにちは。
今日は土曜日ですね♪
普段は会社員の宗流、一週間で一番気分がほっこりする一日です。
(↑お仕事の土曜日もたくさんありますが^^;)
みなさまはどんな週末をお過ごしでしょうか~?
さて。
しばらく投稿の期間があいちゃいました…。
前回の「2010 正倉院展」のお話の最終回がUPできていませんでしたので
知らないふりをして、こっそりとお送りいたします^^
前回までのお話はこちら→vol.1 vol.2
では、さっそくまいりましょう~!!
本日ご紹介いたしますのは、正倉院宝物の中でもよく知られる
特徴的な染色方法を施した宝物三点です。
まずはこちらから。
一枚目は「夾纈羅中幡残欠(きょうけちらのちゅうばんざんけつ)」です。
「幡」というものは、寺院などで教団の標幟として用いられました。
右側の端に三角形の部分が見えるかと思いますが、これを幡頭(ばんとう)といい
その下につながる長い生地を幡身(ばんしん)といって、
そこに絵や文字が書かれていたそうです。
少し解りづらいのですが、この幡身にも大きな華文が描かれています。
そして、その染色技法はこの宝物の題目となっている「夾纈」です。
夾纈は「きょうけち」と読みます。なかなか聞き慣れない言葉ですが、
実はこの夾纈、現代の私たちも目にする機会のおおい染色技法なのです。
夾纈の文字を分解してみると、「夾」=はさむ 「纈」=しぼり と読み、
これはどちらも技法をあらわします。
もうお分かりでしょうか、これは現代でいう「板締め絞り」の原型です。
板締め絞りは、染色や染め抜きたい形に作られた木型で生地を強く挟んで固定し
染色を施す技法です。
手拭いや浴衣地、帯なんかにもこの幾何学的な模様は目にする事がありますね^^
そして、二枚目は「鳥草夾纈屏風(とりくさきょうけちのびょうぶ)」です。
これは屏風の扇(せん)の部分です。
屏風は蝶番などで絵の描いてある面が数枚つながっており、その面が六枚あれば
六曲屏風とよばれます。またこの面のことを「扇」とよび、先の六面の屏風などは
六扇屏風とあらわします。
またこの六曲屏風を数える単位を「一畳(じょう)」とよび、正倉院の宝庫には
この六扇一畳の屏風が十数畳おさめられているそうです。
ちなみに、この六扇一畳の屏風を二帖併せて一具(ひとよろい)と数えるそう。
…古くからあるものの数え方ってややこしいですね^^;
この鳥草夾纈屏風も、夾纈が染色技法として使われており、
鳥はキンケイ、草花はタチアオイが描かれています。
キンケイという鳥は、よく正倉院の宝物に描かれる種類の一つです。
キンケイは金鶏とあらわすのですが、種類としては鶏ではなくキジの仲間です。
名前の通り金色に輝く羽毛でおおわれた美しい鳥なのですが、
孔雀やオシドリなどと同じく、艶やかな姿形は雄だけで雌は非常に地味な鳥です。
…何だか、女性の方がお洒落好きな人間とは真逆ですね~。
少しお話が逸れてしまいましたが、この夾纈は奈良時代に盛んに用いられた技法なのですが
その後は急激に廃れてしまいます。
しかし、古くから行われていた技法とはいえ、その技術は大変高度なものといわれています。
先の幡のお話でも少し触れましたが、夾纈は板で生地を挟んで防染するというもので
同じ型で染め上がった生地には、当然のことながら同じ文様が染められます。
現在では同じ模様を量産することは何でもない事ですが、
夾纈が使われる以前など、織以外の染色で同じものを量産する事は大変困難だったでしょうね。
そんな中でこの夾纈の技法は当時はきっと画期的な技法だったのでは?
そんな風に宗流は思います。
三枚目は「白橡綾錦几褥(しろつるばみにしきのきじょく)」です。
几褥とは、仏前に供物などをささげる際に机の上に敷く敷物をいいます。
簡単にいえば、現在のテーブルクロスのようなものでしょうか^^
また白橡は古代の色の名前です。これはクヌギなどのどんぐりがなる樹木の樹皮や実を使い
染められたものをさすのですが…宗流、この白橡ってイマイチよくわかりません。
色としてはやや赤みのある薄い鈍色系統の色なのですが、
これという表現がなかなか思いつきません。ゴメンナサイ
ちなみに、一般的によく聞くどんぐりや樹皮で染めた橡色は、赤みのある深い鈍色です。
この几褥をよくご覧頂くと、どことなく南国風の雰囲気を感じて頂けるかと思います。
(スミマセン!とても見にくいかと思います。ゴメンナサイ)
文様は中央に実を付けたナツメヤシを配し、その樹下に二頭のライオン、
またその脇には鞭を持った男性があらわされています。
画像を取り込んだ正倉院の図録には、中国からの舶載品か国産のものか不明とあったのですが
文様のもつ雰囲気としては、遠くはローマや東西アジアなどの各国の影響を
受けたものである事がうかがえます。
このライオン(獅子)をモチーフにした文様は、正倉院の宝物にも多く見られ、
樹木と共に描かれたものや、人物を配したものなど多様です。
これはサテン朝ペルシャから渡来したものと言われているのですが、
獅子をモチーフにしたものでもう一つよく聞くものに「唐獅子」があります。
ペルシャ渡来の獅子は実在のライオンをモチーフにしたものが多いのですが、
唐獅子は名前からも解るように中国のもので、空想上の生き物です。
同じ「獅子」をモチーフにしたものでも、微妙に違いのあるところが面白いものですね^^
では、ここ最近ようやく恒例となった(?)クイズコーナーです^^
きもの検定の三級~を受験される方などにご覧頂けると嬉しいのですが、
そうではない方もどうぞお気楽に挑戦なさってみて下さいね♪
1:奈良・天平時代、特に盛んだった染色技法三つを総称して、
「天平の三纈」とよんだそうです。
この三纈の一つは夾纈なのですが、さてあとの二つは何でしょうか?
2:正倉院文様の中には、動物をモチーフにしたものが多く見られ、
獅子をモチーフに用いたものも多数あります。中でも馬上の騎士が獅子を射ようと
する様を描いた( ① )や、口を開いた獅子の顔を並べた( ② )などがあります。
3:唐獅子は中国の空想上の動物をあらわしたものですが、単体で描かれるだけでなく
花や樹木、自然の風物などとも併せて描かれます。中でも能の「石橋」では、
文殊菩薩の使いの獅子が、咲き乱れるある花の中を舞い踊るという場面があります。
この花と獅子を併して描かれる文様を何というでしょうか?
それでは答えです~!
※あくまでも宗流の解釈なので、単なる参考程度でとどめておいて下さいね^^
1:天平の三纈…夾纈(きょうけち)・纐纈(こうけち)・﨟纈(ろうけち)の三つをいい、
夾纈は板締め絞り、纐纈は絞り染め、﨟纈はロウケツ染めをさしています。
どれも名称・呼称は変わりますが、現代にも見られる技法ですよね^^
2:①獅子狩文 ②獅噛文(しがみもん)といいます。
龍村美術織物さんの生地なんかでもよく目にする事がありますね。
ちなみに、宗流は獅噛文と記憶していたのですが、「獅子噛文」と、表記されて
いる場合もあるようです。
3:唐獅子牡丹
獅子はよく百獣の王とされますが、牡丹も「百花の王」とよばれます。
もちろん無数にあるものの中で、それぞれに美しさを持つ花ですから、
どれを一番とするかは難しいでしょうけどね^^;
宗流
今日は土曜日ですね♪
普段は会社員の宗流、一週間で一番気分がほっこりする一日です。
(↑お仕事の土曜日もたくさんありますが^^;)
みなさまはどんな週末をお過ごしでしょうか~?
さて。
しばらく投稿の期間があいちゃいました…。
前回の「2010 正倉院展」のお話の最終回がUPできていませんでしたので
知らないふりをして、こっそりとお送りいたします^^
前回までのお話はこちら→vol.1 vol.2
では、さっそくまいりましょう~!!
本日ご紹介いたしますのは、正倉院宝物の中でもよく知られる
特徴的な染色方法を施した宝物三点です。
まずはこちらから。
一枚目は「夾纈羅中幡残欠(きょうけちらのちゅうばんざんけつ)」です。
「幡」というものは、寺院などで教団の標幟として用いられました。
右側の端に三角形の部分が見えるかと思いますが、これを幡頭(ばんとう)といい
その下につながる長い生地を幡身(ばんしん)といって、
そこに絵や文字が書かれていたそうです。
少し解りづらいのですが、この幡身にも大きな華文が描かれています。
そして、その染色技法はこの宝物の題目となっている「夾纈」です。
夾纈は「きょうけち」と読みます。なかなか聞き慣れない言葉ですが、
実はこの夾纈、現代の私たちも目にする機会のおおい染色技法なのです。
夾纈の文字を分解してみると、「夾」=はさむ 「纈」=しぼり と読み、
これはどちらも技法をあらわします。
もうお分かりでしょうか、これは現代でいう「板締め絞り」の原型です。
板締め絞りは、染色や染め抜きたい形に作られた木型で生地を強く挟んで固定し
染色を施す技法です。
手拭いや浴衣地、帯なんかにもこの幾何学的な模様は目にする事がありますね^^
そして、二枚目は「鳥草夾纈屏風(とりくさきょうけちのびょうぶ)」です。
これは屏風の扇(せん)の部分です。
屏風は蝶番などで絵の描いてある面が数枚つながっており、その面が六枚あれば
六曲屏風とよばれます。またこの面のことを「扇」とよび、先の六面の屏風などは
六扇屏風とあらわします。
またこの六曲屏風を数える単位を「一畳(じょう)」とよび、正倉院の宝庫には
この六扇一畳の屏風が十数畳おさめられているそうです。
ちなみに、この六扇一畳の屏風を二帖併せて一具(ひとよろい)と数えるそう。
…古くからあるものの数え方ってややこしいですね^^;
この鳥草夾纈屏風も、夾纈が染色技法として使われており、
鳥はキンケイ、草花はタチアオイが描かれています。
キンケイという鳥は、よく正倉院の宝物に描かれる種類の一つです。
キンケイは金鶏とあらわすのですが、種類としては鶏ではなくキジの仲間です。
名前の通り金色に輝く羽毛でおおわれた美しい鳥なのですが、
孔雀やオシドリなどと同じく、艶やかな姿形は雄だけで雌は非常に地味な鳥です。
…何だか、女性の方がお洒落好きな人間とは真逆ですね~。
少しお話が逸れてしまいましたが、この夾纈は奈良時代に盛んに用いられた技法なのですが
その後は急激に廃れてしまいます。
しかし、古くから行われていた技法とはいえ、その技術は大変高度なものといわれています。
先の幡のお話でも少し触れましたが、夾纈は板で生地を挟んで防染するというもので
同じ型で染め上がった生地には、当然のことながら同じ文様が染められます。
現在では同じ模様を量産することは何でもない事ですが、
夾纈が使われる以前など、織以外の染色で同じものを量産する事は大変困難だったでしょうね。
そんな中でこの夾纈の技法は当時はきっと画期的な技法だったのでは?
そんな風に宗流は思います。
三枚目は「白橡綾錦几褥(しろつるばみにしきのきじょく)」です。
几褥とは、仏前に供物などをささげる際に机の上に敷く敷物をいいます。
簡単にいえば、現在のテーブルクロスのようなものでしょうか^^
また白橡は古代の色の名前です。これはクヌギなどのどんぐりがなる樹木の樹皮や実を使い
染められたものをさすのですが…宗流、この白橡ってイマイチよくわかりません。
色としてはやや赤みのある薄い鈍色系統の色なのですが、
これという表現がなかなか思いつきません。ゴメンナサイ
ちなみに、一般的によく聞くどんぐりや樹皮で染めた橡色は、赤みのある深い鈍色です。
この几褥をよくご覧頂くと、どことなく南国風の雰囲気を感じて頂けるかと思います。
(スミマセン!とても見にくいかと思います。ゴメンナサイ)
文様は中央に実を付けたナツメヤシを配し、その樹下に二頭のライオン、
またその脇には鞭を持った男性があらわされています。
画像を取り込んだ正倉院の図録には、中国からの舶載品か国産のものか不明とあったのですが
文様のもつ雰囲気としては、遠くはローマや東西アジアなどの各国の影響を
受けたものである事がうかがえます。
このライオン(獅子)をモチーフにした文様は、正倉院の宝物にも多く見られ、
樹木と共に描かれたものや、人物を配したものなど多様です。
これはサテン朝ペルシャから渡来したものと言われているのですが、
獅子をモチーフにしたものでもう一つよく聞くものに「唐獅子」があります。
ペルシャ渡来の獅子は実在のライオンをモチーフにしたものが多いのですが、
唐獅子は名前からも解るように中国のもので、空想上の生き物です。
同じ「獅子」をモチーフにしたものでも、微妙に違いのあるところが面白いものですね^^
では、ここ最近ようやく恒例となった(?)クイズコーナーです^^
きもの検定の三級~を受験される方などにご覧頂けると嬉しいのですが、
そうではない方もどうぞお気楽に挑戦なさってみて下さいね♪
1:奈良・天平時代、特に盛んだった染色技法三つを総称して、
「天平の三纈」とよんだそうです。
この三纈の一つは夾纈なのですが、さてあとの二つは何でしょうか?
2:正倉院文様の中には、動物をモチーフにしたものが多く見られ、
獅子をモチーフに用いたものも多数あります。中でも馬上の騎士が獅子を射ようと
する様を描いた( ① )や、口を開いた獅子の顔を並べた( ② )などがあります。
3:唐獅子は中国の空想上の動物をあらわしたものですが、単体で描かれるだけでなく
花や樹木、自然の風物などとも併せて描かれます。中でも能の「石橋」では、
文殊菩薩の使いの獅子が、咲き乱れるある花の中を舞い踊るという場面があります。
この花と獅子を併して描かれる文様を何というでしょうか?
それでは答えです~!
※あくまでも宗流の解釈なので、単なる参考程度でとどめておいて下さいね^^
1:天平の三纈…夾纈(きょうけち)・纐纈(こうけち)・﨟纈(ろうけち)の三つをいい、
夾纈は板締め絞り、纐纈は絞り染め、﨟纈はロウケツ染めをさしています。
どれも名称・呼称は変わりますが、現代にも見られる技法ですよね^^
2:①獅子狩文 ②獅噛文(しがみもん)といいます。
龍村美術織物さんの生地なんかでもよく目にする事がありますね。
ちなみに、宗流は獅噛文と記憶していたのですが、「獅子噛文」と、表記されて
いる場合もあるようです。
3:唐獅子牡丹
獅子はよく百獣の王とされますが、牡丹も「百花の王」とよばれます。
もちろん無数にあるものの中で、それぞれに美しさを持つ花ですから、
どれを一番とするかは難しいでしょうけどね^^;
宗流
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